昨日の泥

けれど夕陽はお前と仲間の髑髏を映す

使用中止の件

多分、エンブレムだけなら使用中止にはならなかっただろう。参考にしたとしても非難されるようなことではない。ただパンと眼鏡の写真についてはご本人が行ったのではないのだろうけど、名前が前面に出ている以上、エス氏の仕事として見ざるを得ない。そうなったときに、今後、エンブレムに関しても事態が悪化することは十分予想されるので、安全策を取って使用中止の判断をしたのはそれほど不思議ではない(デモンストレーションの要素があることも否定できないが)。

そのパンと眼鏡の件が掘り起こされるきっかけとなったのはエス氏が「まったくのオリジナルである」「似ていない」と言ったことにあると思う。多分さまざまな事情があって「参考にした」とは言えないのだとは思うけど、それを抜きにしてもあまりに世間を挑発しすぎた言動だと思う。挑発の結果として過去の仕事が検証され、この件がなければ表立って問題になることもなかったであろうと思われる「盗用疑惑」が掘り起こされることになった。その大半は単なる言いがかりや合法的な範囲内だったのだろうけど、執拗に検証を繰り返されたことで、今回のようにクロと判定されるものが出てきてしまったのだろう。

後出しならなんとでも言えるが、やはり、初動の対応が良くなかったのだろう。個人的には「似てない」と言ったことが火に油を注いだのではないかと思っている。エンブレムの審査担当のお一人が後になって原案があったことを公表した時に「原案は似ていなかった」と言ったそうだ。これは修正後のエンブレムが似ていると審査員も認めているということだ。それに盗用ではないかと疑われた最初の頃にエス氏を擁護していた人たちには「優れたデザインが偶然似てしまうことは珍しいことではない」と言ってた人も少なくなかった。主張の真偽はともかく、似ているという前提で弁護していたわけだ。そのように悪意を持って臨んでない人も含めた多くの人が「盗用かどうかはともかく、似ている」と思っているのに「似ていない」という言い方をしたのが最大の失敗ではないだろうか。盗用かそうでないかは当事者たちの問題だが、似てる似てないは自分の目で見て脳が判断した主観だ。その主観を間違っていると否定されたのだから「こいつ、本気で引きずり下ろしてやる」と思う人がたくさん現れても不思議ではない。

ではどんな対応をすればよかったのか?となると話は難しくなる。それに何か案を出すと「お前は業界のことを何も知らないからそんな事が言えるんだ」って事情通ぶった小物に言われるのも癪なので書かない。